「まさか自分が? 考えも及ばなかった男性更年期…。世の中全体がもっと認知すべきときが来ていると思います」/くにさん(52歳)の場合/男性更年期インタビュー(1)
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更年期障害といえば女性の悩み…とされたのは過去の話。近年は男性にも性ホルモンの減少に由来する更年期症状が発症することがわかっています。
身体的には 疲労感や倦怠感、性欲の低下、ED、不眠、肩こり など、精神的には 気力の衰え、集中力の低下、イライラ などの症状がそれに当たりますが、一人で悩みがちの男性もいるようです。この連載企画では、更年期症状を自覚する複数の男性にインタビューを実施。それぞれの実感や体験エピソードを通して男性更年期のリアリティをお伝えします。
※本サイトに掲載する体験記事は、全て個人の体験に基づいています。
目次
ホルモンバランスの乱れ? 発疹、発汗、赤ら顔など男性更年期の症状が!
製薬会社を経て、現在は医療機器会社に勤務。管理部門でコンプライアンスに関する検討事項や研修などを担当。妻と息子2人の4人暮らし。
――くにさんが更年期を意識したきっかけを聞かせてください。
更年期といえば女性のイメージでした。2歳下の妻の様子を見ていても、男性の自分にはないことだと思っていたし、正直、 男性更年期などまったく意識していなかった のが本当のところです。
ところが、あるときから湿疹が出るようになりました。お腹のまわりだったので、それが蕁麻疹(じんましん)なのか乾燥性湿疹なのかわからず、すぐに皮膚科を受診しました。
診断結果は「蕁麻疹」。塗り薬と飲み薬を処方してもらいましたが、良くならず、症状は悪化。むしろ広がってしまい、薬を増やしながら様子を見る状況が続きました。
思うように改善できず「このままじゃ」と言うことで、自己判断でセカンドオピニオンを受けることにしたんです。3年ほど前のこと、49歳から50歳にかけての頃の話です。
「生活習慣病の“サラブレッド”」と言われていた自分。体調管理に気をつけていたのが仇になりストレスの原因に
最初に受診した皮膚科(形成外科)の先生は男性でしたが、今度の先生は皮膚科専門医の女性で、一度かかったことがある病院でした。そのときの先生の印象が聡明ではっきりものを言う方だったことが決め手になりました。「あの先生なら、はっきり言ってくれるな」と。原因がわからず、悶々としていましたから。
セカンドオピニオンでは症状や薬が効かないことなど、経緯を含めて全てを伝えました。すると、先生の口から出たのは思いもよらなかった言葉。「 それは更年期じゃないか 」でした。
実際、腹部の蕁麻疹だけでなく、突然の発汗(ホットフラッシュ?)も起こるようになっていて、昼間から酔っ払っているような赤ら顔になることもありました。そして「それは酒さ(しゅさ)です」と。「酒さは主に中高年以降に発症する皮膚の病気で、ホルモンバランスの乱れとストレスと更年期から来ている」と言われました。
これが、自分が「更年期」というものを初めて意識した瞬間でした。衝撃的でしたね。忙しい日々でしたが、仕事は楽しくやっていましたし、誰かと酒でも飲んで話せばストレスも解消できてしまうタイプ。プライベートでの心配ごとも子どもの受験程度で、眠れないということもなかったですし。
ただ、言われてみれば気づかないストレスもあったかもしれない。親が糖尿病と高脂血症の持ち主で、自分は「生活習慣病のサラブレッド」だと言われていたこともあって、食事に関しても気を使っていましたし、太らないようにもしてきました。「蕁麻疹」もお酒の飲み過ぎかなと思って控えるようになりました。なので、よけいに先生は「ストレスが誘因になったのでは」とおっしゃっていました。
「更年期」と診断され、意識をすることで逆に冷静になれました
――症状とはどのように付き合っていますか。改善のために行っていることはありますか。
僕の場合は蕁麻疹や酒さから、更年期という診断をされたわけですが、幸いにも先生の見立てで今は薬がいらない状態まで改善しました。ただ、「 もしかしたらこの先違う何かがくるかも 」「 あるだろう 」という思いはもちろんあります。そうなったら付き合うしかないと思っていますが、実際50歳を過ぎて体力の低下を顕著に感じますし、以前は暴飲暴食で太っても戻せた体重が、なかなか落ちなくなりましたね。
同時に、体力をつけるために「運動しなければ」と思っても、行動に移すまでがおっくうで。一つひとつ、踏み出すことが難しくなっている。とにかく時間がかかるんですよね。なんだか知らないけれど。
でもそんななかで、今年は7年ぶりにスキーをやる機会があって、それがものすごく楽しかったんです。「ねばならない」ことをやるのは面倒でも、「したい」ことに関してはまだやれる自分を発見できました。まぁ、今思うと、コロナ前にやっていたフットサルやランニングも「やりたい」というより「何かやらなきゃ」という意識でやっていたのかもしれません。気づきの連続ですね。
――現在の状態はどのような感じですか。
「更年期」と診断されてから、意識をするようになったことで逆に冷静になれていると思います。幸いにもメンタル面の落ち込みなどは楽観主義も手伝って、さほど感じていません。ただ楽観主義というのは裏を返すと悲観主義でもありますよね。そこは慎重に見ていかないと。なにごともセットですから。
男性更年期が認知され、解決しやすい社会になってほしい
――実際に更年期を体験して、今感じているのはどんなことですか。
「更年期」と診断されてから、ネットで情報を検索する機会は俄然増えましたね。テレビなどで取り上げられたりしていると、素通りはできなくなりました。でも、 女性の更年期と比べると男性更年期に関する情報はまだまだ少ないですよね 。
僕は、今年に入って今の会社に転職したのですが、僕が入社する少し前に男性の更年期を取り上げたセミナーがあったそうで、 その話を聞いたとき「おぉ、いいねぇ」と思いました 。世の中的にはこれから認知度が上がっていくと思いますが、今はまだ男性同士で更年期の話をすることなんてまずないのが現状。「男性にも更年期があり、症状もある」ということを知って、共有し合えるのはすごく良いことだと思います。
実際、男性更年期を疑う症状が現れても、何科に行ったらいいのかわからない人だらけだと思います。病院側も、とあるテレビ番組では、内科の先生が「内科に来られるのは困る」と言っていましたし、男性更年期のことがよくわからない科に行って、不適切な診断・処置を受けることになってしまったらどうなのかと思います。
更年期中の妻に遠慮? 言えなかった自分の更年期
あと、やはり人と話すことの必要性は感じています。でも感じていても、 妻には話していません。自分のことは自分でなんとかしなきゃという思いが続いてます。
妻も更年期に差しかかる年齢だから、遠慮もあるのかな。買い物や食事の支度はだいぶやるようになったし、もはや妻にとって自分は「放っておいても自分でできる人」と思われているかもしれません。本当はもっと話し合うのが理想なのかもしれませんが。そこはなかなか…。
男性は一人で抱えがち? 人に話すことで気持ちの整理を
寿命が伸びて「更なる年の期間」が多くの人にあるのが現代。閉経に伴うシグナルがある女性よりも、身に起こる不調が更年期によるものと気づきにくいのが、男性の更年期。くにさんのように、不調を感じてもただ「飲み込んで我慢」しがちな男性は多いのかもしれません。
こうした悩める男性たちが、解決への一歩を踏み出す気づきの一助になれば、との思いから取材に応じてくださったくにさん。取材後は、「自分の中で整理ができた。話して良かった」と語ってくれました。
取材・文/野村始子
男性更年期のインタビュー体験談、次回は「突然の嘔吐、めまい」で悩んでいた男性の体験エピソードをお伺いします。更年期の症状は男性も女性もさまざまです。ぜひみなさんのご意見、ご感想をお寄せください。
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