「40代半ばに差しかかったころ、今までとは大違いの自分が待っていた。仕事の生産性が30%ダウンして…」/だいすけさん(46歳)の場合/男性更年期インタビュー(5)
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更年期障害といえば女性の悩み…とされたのは過去の話。近年は男性にも性ホルモンの減少に由来する更年期症状が発症することがわかっています。
身体的には 疲労感や倦怠感、性欲の低下、ED、不眠、肩こり など、精神的には 気力の衰え、集中力の低下、イライラ などの症状がそれに当たりますが、一人で悩みがちの男性もいるようです。この連載企画では、更年期症状を自覚する複数の男性にインタビューを実施。それぞれの実感や体験エピソードを通して男性更年期のリアリティをお伝えします。
※本サイトに掲載する体験記事は、全て個人の体験に基づいています。
目次
働き盛りのはずなのに思うように働けず、気合いでやりすごすのも限界に…
商社勤務を経て、現在はアプリの開発・販売を行うIT事業を経営。妻と娘の3人暮らし。商社時代はアメリカやイタリアに赴任。もともと決断が早いタイプだが、海外生活の経験も大きい。「男性更年期」の診断を受け入れ、治療を受けることに迷いはなかった。
――ご自身の「男性更年期」を意識したきっかけを聞かせてください。
かれこれ3年近く前になります。自分の周りでも「夏が苦手」という人と、「冬が苦手」という人がいますが、僕の場合は明らかに後者。もともと寒さには弱いタイプで、冬になると気力が落ちるのはわかっていました。
2019年の秋。あのときはまだそこまで寒くはなかった。 自分の調子に疑問符のフラグがたくさん立ちはじめた のです。「本当に俺か?」みたいな。ダルかったり、眠かったり、起きられなかったり。異常なほど寝てしまうこともありました。起きられても、1日中ボーッとしてしまう日もあって、「いくら冬が苦手と言っても、今までこんなことはなかったよな俺」状態でした。
思うように働ける時間も減りました。集中力がかなりダウン。続けていたホットヨガの効き目も焼石に水状態で、仕事の生産性は30%くらい下がりました。まだまだ働き盛りのはずなのに。個人事業主なので、それだけ下がれば売上にも直結です。お金を稼ぐのに燃費が悪くていいはずはありませんから。
しかも、冬が終わって暖かくなっても状態は変わりませんでした。健康診断で悪いところが見つかったならまだしも、そうではない状態で自分をだましだましというか、「気合いだ! 気合いだ!」と奮い立たせながら1年半を過ごしました。その気合いも底をついたころ、とある人に「一度診てもらったほうがいい」と言われ、病院に行きました。訪れたのは泌尿器専門のクリニック。 血液検査の結果、テストステロン(男性ホルモン)の数値から「男性更年期」 という診断が下されたのです。
とある人というのは、当時、仕事のプロジェクトで協力してもらっていたプログラマーでした。実は彼にはもう一つの顔、というか本職がありまして、大学病院のドクターでした。そのころ、健康系のアプリを開発するためにチームのメンバーに加わってもらっていました。データのサンプルを集めるために毎晩23時に入力していた僕の健康データを見て、彼は「病院へ行け」と言ってきた。見立ては2つ。1つはコロナ禍で外に出ないことで心身の活力が低下する「虚弱性フレイル」、もう1つは「更年期障害」のどちらかであろうと。
結果は「更年期障害」で見事的中。お医者さんに正面から病院に行けと言われ、行くしかなかった。彼に言われなければ、まだウダウダしていたかもしれません。
「男性更年期」という診断結果が出たおかげで、次に進めた
――症状とはどのように付き合っていますか。改善のために行っていることはありますか。
原因がわかると対策も取れます。僕の場合は感情的なショックはさほどありませんでした。謎の不健康でいるより全然いいし、気持ちもラクになりました。性格もあるのかもしれませんが、隠そうとも思いません。自営業というのも大きいかもしれませんね。更年期症状がわかったら昇進できないとか、そういうのもないし。それこそ話題の一つとして、SNSにも投稿したくらいです。
ただ、投稿の反応はめちゃめちゃ薄かった。インターネットの世界では「お悩みを共有するといいことがある」という法則がありますが、大外れ。 「男性更年期」への関心の低さ、認知のなさを痛感 しました。まさにこれから認知されていく分野なのでしょうが、自分が気づいていないだけで“隠れ男性更年期”の人はたくさんいると思います。今回のインタビューもいち早くオープンにしていくべきことという気持ちがあって受けました。
それ以来、僕は月に1、2回のペースでクリニックに通い、注射で治療を受けています。この治療は抵抗がある人もいるようですが、僕は科学を信じているので、ためらいはありませんでした。注射を打った日は体がじわっと熱くなったりしますが、おしなべて気になる症状は半分くらい改善している気がします。サプリメントを飲んだり、体を動かしたりもしているので、注射だけの効果とは断言はできませんが、複合的な中から何かが効いているのは確かです。
その何かの中でも、特にやってよかったのはウォーキングです。妻や娘と一緒に30分〜2時間歩きます。ルートを変えたり、ウォーキングのアプリを利用したり。実際歩くと気だるさが改善されるし、途中に休憩を入れますが、2時間も歩くと結構元気になります。骨が整う感覚、血流がよくなる実感、ほぼホットヨガのような効果を感じるし、何より街歩きは楽しいです。それに歩くってタダですよ(笑)。「お金をかけなくもて効果があるのに、なんでやらないの?」っていう感じです。そうそう、僕に病院行きを勧めてくれたドクターからは「歩かないと寿長縮むよ」と言われました。
今後も男性更年期の治療を継続。「パワーが戻ってきた」体感に期待
血液検査におけるテストステロンの数値から「男性更年期」が明らかになった、だいすけさん。インタビュー時は、次回の診察で経過観察として再び血液検査をすることになっているとのことでしたが、こんな思いを伝えてくれました。
「テストステロンの量がまったく気にならないと言ったら嘘ですが、誰もが20代をピークに減少していくのが自然。データはあくまでも目安。たとえデータが良くても、体感が悪ければ日常に支障がある訳ですから、まずは日々の体感改善を期待したいです」
「今の自分はフルパワーではないけれど、生産性もマイナス30%の状態からマイナス15%ぐらいまで戻ってきています。自分をサンプルにして、男性更年期アプリの開発もできたらいいなと思います」
“隠れ男性更年期”は多いはず。認知拡⼤に協⼒したい
取材の最後に、「(⾃分の男性更年期について)、SNS の投稿に反応がなかったのがすごく意外。でも、実は 「“隠れ男性更年期”はたくさんいると思う。それをいち早くオープンにしていくべきだという気持ちで今回の取材を受けました」と語ってくれた、だいすけさん。
男性にも性ホルモンの減少に由来する更年期症状が発症することがあるということを、当事者が積極的に発信してくれることは、同じ悩みを抱える人々の気持ちを照らす明るい光になりそうです。
取材・文/野村始子
男性更年期の体験談インタビュー、次回は、働き盛りのはずの40代に思うように動けなくなったという男性の体験エピソードをお伺いします。更年期の症状は男性も女性もさまざまです。ぜひみなさんのご意見、ご感想をお寄せください。
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