更年期と不眠の関係〜夜眠れないのに昼間眠くなるのはなぜ?

本マガジンご利用の皆様へ(注意事項等)
「疲れているのに、なかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「昼間、眠くてたまらない」……そんな眠りのお悩みを、抱えていませんか?
もしかしたら、更年期の影響で、眠りの質が下がってしまっているのかもしれません。今回は、更年期と不眠の関係と、自分でできる対処法についてご紹介しましょう。
目次
更年期世代の不眠の原因はさまざま
更年期のこの時期、眠れなくてつらい思いをしているのは、あなただけではありません。
どうして更年期になると、不眠に悩む人が増えてくるのでしょうか?
ホットフラッシュは、快適な眠りにとっても大敵!
更年期の症状であるホットフラッシュ(ほてりやのぼせなど)や汗をかきやすいなどといった「血管運動神経症状」は、寝つきを悪くしたり、夜中に起きてしまったりと、眠りにも悪い影響を与えてしまいます。
更年期女性の眠りの質を調べたアンケート※でも、血管運動神経症状のある人は、寝つきが悪く、日中の眠気や意欲の低下を感じる人が多いという結果でした。
※香坂雅子. 文部省科学研究費補助金「日常生活における快適な睡眠の確保に関する総合研究」成果報告書. 平成11年-13年. 平成14年6月. p.60-74.

ホットフラッシュの主な症状と対策
いろいろなストレスや不安に直面する時期
ストレスや不安なども、不眠の原因となります。
でも、更年期って、自分のことでも家族のことでも、悩み多き年代ですよね。
体調も不安定になりやすく、身体が不調だと気持ちもなんとなく落ち込んでしまいます。
また、お子さんがいる方は、だんだん手がかからなくなってきて嬉しい反面、巣立っていったあとに心にぽっかり穴が開いたような気持ちになってしまうことも。ほかにも、親の介護が必要になってきたり、自分の老後も心配だったりと悩みは尽きず、更年期世代の女性は、いろんなストレスや不安にさらされているのです。
閉経後は、睡眠時無呼吸症候群が女性にも増加
また、睡眠時無呼吸症候群も不眠の原因の一つです。寝ている間に呼吸が止まってしまい、何度も目が覚めてしまうため、深い睡眠がとれなくなり、昼間の眠気につながります。男性に多いというイメージをもたれやすいですが、更年期以降は女性にも増えてくるので、気をつけたい病気です。
<更年期の不眠の原因>
心地よい眠りを手に入れるためのコツは?
毎日の何気ない習慣が、知らないうちに快適な眠りを邪魔してしまっているかもしれません。
朝のルーティーンや寝る前の日課など、生活習慣をちょっと見直すだけでも、心地よい眠りに一歩近づけるはず。
たとえば、こんな習慣から意識して、快眠生活を目指してみませんか?
【日中】朝は太陽の光を浴び、適度な運動を
- 朝起きて太陽の光を浴びることが、夜の寝つきをよくして眠りの質を高めてくれます。朝は、なるべくいつも決まった時間に起きるようにしましょう。
- よい眠りのためには、適度な運動も大切です。ただし、激しすぎる運動は、かえって寝つきを悪くしてしまうこともあります。軽く汗ばむ程度の無理なく続けられる運動を、普段の生活に取り入れましょう。
- 昼寝が、夜眠れない原因になることも。昼間眠くてしかたがないときは、30分程度の短い昼寝をするのもよいですが、遅い時間の昼寝は避けましょう。
【就寝前】寝る前のおすすめ習慣とNG習慣
- 寝る時間にこだわりすぎると、プレッシャーになって余計に寝つけなくなってしまいます。自然に眠くなるまでは、布団に入らないようにしましょう。
- スマホの明るい画面を見ると、交感神経が活性化して、目覚めるモードのスイッチが入ってしまいます。メールやニュースのチェックなどを寝る前のルーティーンにしている場合は、なるべく寝る直前は避けて、早めの時間に変えてみましょう。
- 悩みや心配ごと、考えごとがあると、寝つきが悪くなり、寝ても浅い眠りになってしまいます。明日以降のことは、「積読(つんどく)」の本のように、寝るときは一旦脇に置いておくのはいかがでしょうか。寝る前にノートなどに書き出すことは、忘れるわけではないけれど、心の中から取り出して、眠りに集中できるようになるコツの一つです。
- 寝る前のカフェインにも注意が必要です。コーヒーだけでなく、紅茶や緑茶、チョコレート、一部の栄養ドリンクなどにもカフェインが含まれているので気をつけましょう。寝る時間に近づいてきたら、カフェインの入ったものはとらないようにしましょう。
- 寝つきをよくするためにお酒を飲むという人もいるかもしれません。でも、実はこれは逆効果。いったん寝ついても、アルコールが深い眠りを妨げ、夜中に目が覚めてしまうことも。眠るためのお酒は、やめておきましょう。
- たばこに含まれるニコチンには精神刺激作用があるため、目が冴えてしまいます。夜の喫煙は避けましょう。
- 寝る前に水分を摂りすぎると夜中にトイレに行く回数が増えます。心当たりのある場合は、少し減らしてみましょう。ただし、脳梗塞や狭心症などの病気がある人は、医師の指示を優先して必要な水分をきちんととることが大切です。
【寝室改善】快眠環境を整えて良質な眠りを
- 夜の明るすぎる光はNG。部屋の照明の明るさを調整したり、間接照明に切り替えたりしてみましょう。白っぽい光より、赤っぽい暖色系の光の蛍光灯がおすすめです。外の光が気になるときは、遮光カーテンも有効です。
- 寝室が暑かったり寒かったりしていませんか? エアコンを上手に利用して、室温や湿度を快適に保ちましょう。
- ベッド・布団・枕などの寝具選びも大切です。枕の高さや布団のかたさなど、自分の身体に合っているかどうか見直してみましょう。
忙しい日々のなかで、生活習慣をあれこれ変えることは、なかなか難しいかもしれません。まずは、寝る前のリラックスタイムに好きな音楽や読書などを楽しんで、気持ちが落ち着く過ごし方をしてみてはいかがでしょうか。
ただし、眠れないことで生活に支障をきたしている場合や、生活習慣を見直しても改善されない場合には、自己判断せず、かかりつけ医や婦人科医に相談することも大切です。
お薬やカウンセリングなど、更年期に対する治療を行うことで、ホットフラッシュや発汗、不安感などがよくなってくれば、眠りの悩みも改善される可能性があります。また、もし睡眠時無呼吸症候群が隠れている場合、放っておくと、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞などのこわい病気のリスクが高まってしまうかもしれません。睡眠外来、心療内科、精神科などの専門的な治療が必要なこともありますので、一度は医療機関に相談してみましょう。

更年期治療におけるカウンセリングとは?専門医が解説
「眠りたいのにうまく眠れない」といういわゆる不眠の状態は、誰でも経験したことがあるものでしょう。でも、それが長く続くときには、「不眠症」という、治療が必要な病気である可能性があります。また、眠れない日々が続くと、「今夜も眠れないかも」という不安や「早く寝なくちゃ」という焦りから、かえって目が冴えて眠れなくなるという悪循環に陥ってしまうことも。
不眠症の症状には「入眠困難」「中途覚醒」「早期覚醒」「熟眠障害」などがあります。このような症状のいずれかが1か月以上続いていて、疲れがとれない、朝起きられない、日中に眠くなり集中力が落ちる、イライラする、体調不良など生活に支障をきたすようなことがあれば、早めに医師に相談しましょう。
入眠困難:布団に入ってから入眠するまで時間がかかり、寝つきが悪い
中途覚醒:起床時間までに、何度も目が覚める
早朝覚醒:通常の起床時間より2時間以上早く目が覚めてしまい、そのまま眠れない
熟眠障害:睡眠時間が十分とれていても、ぐっすり眠れたという満足感が得られない
監修
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座
教授 寺内 公一 先生