更年期と要介護リスク 第1回

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更年期と要介護
どちらの言葉もよく耳にして、誰もがそれぞれのイメージはあるものの、この2つの関係性を考えたことはあるでしょうか?
更年期の過ごし方と、要介護リスクの関係について、2回にわたって紹介していきます。
平均寿命と健康寿命
日本における75歳以上の後期高齢者の人口割合は、女性が男性の1.5倍多く、平均寿命も女性は男性より6.1年長いことが知られています。
一方、「健康寿命」と呼ばれる期間の男女差は、それほど大きくないため、女性は男性よりも寿命が長い分だけ、「要介護」の期間が男性よりも長くなります。
加えて、女性の要介護者の割合は男性の2倍であることから、女性は男性に比べ、より要介護になりやすいと考えられています。
下のグラフは、女性が要介護になる要因の順位です。
1位の認知症(アルツハイマー型認知症)の発症率には性差があり、女性の方が男性に比べて3倍ほど高いことが確認されています。その背景として、閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)欠落との関連が注目されています。
また、3位の骨折についても、エストロゲン欠落による筋力の低下や骨密度の低下が原因と考えられています。
女性の要介護要因
女性ホルモン(エストロゲン)の働きと卵巣機能の停止
女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンは、女性の身体の中で様々な役割を果たしています。
エストロゲンは、女性の更年期が始まる頃から、分泌量が低下し始めます。エストロゲンの減少は、卵巣機能が低下することが原因で起こります。最終的に卵巣がその機能を停止する、つまり更年期が終わると、エストロゲンは分泌されなくなります。
エストロゲンが分泌されなくなると、その作用で活性化していたあらゆる器官が、その影響を受けることとなります。
骨量の低下がすすむと、骨密度が低下し骨折しやすくなります。コレステロール値の調整機能が低下することで、血中コレステロール値が上昇し、血管の弾力性が落ちることで動脈硬化が起こりやすくなります。また、脳血管の血流が悪くなると、認知機能にも影響を及ぼします。このような変化が、女性の要介護要因である「認知症」や、「骨折」につながると考えられています。
今回は、更年期が女性の身体におよぼす影響を紹介しました。
次回は、要介護につながる2大リスク、「認知症」と「骨粗しょう症」の対策について。
女性にとって、なんとも悩ましい更年期ですが、ただガマンして、あきらめてやり過ごすしかないのでしょうか?
MENO MAGAZINEでは、更年期の過ごし方を工夫するヒントも紹介しているので、こちらの記事も読んでみてくださいね!

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監修
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座
教授 寺内 公一 先生