エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)法で感情・思考を整理

本マガジンご利用の皆様へ(注意事項等)
何か気分が落ち着かない。何となくイライラが続いている。ただ、振り返れば1つ2つ、思い当たる節がある。
一か月前の出来事だったり、先週の出来事だったり、昨日の出来事だったり、時と場合によりますが、「あること」が気持ちのどこかにずっと残っていて、それを思い出すと気分が悪くなるというのを繰り返すことがよくあります。
こういうときには、エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示法)が役に立ちます。
目次
悪い気分を長引かせないために有効
私たちは誰しも、日々の出来事によって気分が上がったり下がったりを繰り返します。できることならポジティブな出来事ばかりでずっと良い気分のままで過ごしたいものですが、なかなかそうはいきません。むしろ、日常生活はネガティブな気持ちになってしまう出来事にあふれていて気分が悪くなることもしばしばです。
そういうときには、毎日の悪い気分をあまり長引かせないよう(溜め込まないよう)、一つひとつ解消していくことが大切です。
つまり、悪い気分をあまり膨らまさないよう、ほどほどのところで少しずつ解消していく、というニュアンスです。
すぐに解消しようとしなくても良いです。解消できるときに解消しておく、という心がけです。
エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)とは?
「エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)」とは、簡単に言えば感情や思考を言語化すること。自分の気持ちを言葉で表現するだけですから、方法としてはごく単純です。
しかし、これがなかなか簡単ではありません。自分の気持ちを言葉にするというのは、意外に難しいものです。エクスプレッシブ・ライティングは、この一見簡単そうで実はけっこう難しい感情の言語化をあえてするところに意味があります。
<エクスプレッシブ・ライティングとは>
- 感情や思考を言語化すること
- 自分の気持ちを言葉で表現することは、悪い気分を解消するのに役立つ
エクスプレッシブ・ライティングの効果
自分の気持ち(感情や思考)を言葉にするには、そもそも、自分の気持ちをよく観察しないと始まりません。
つまり、自分の気持ちに正面から向き合うこと(直面すること)、そして、客観的に距離を置いてよく見てみることが必要です。
書こうと思う対象そのものをよく知らなければ、何も書けませんね。まずは自分の気持ちをよく知ることができる。これがエクスプレッシブ・ライティングの1つ目の効果です。
よく知ることができたら、次はそれを具体的な言葉に表す段階です。
言葉で表すと言っても、何が何やら訳のわからない文章にする、という意味ではありません。 誤字脱字は気にする必要はありませんが、少なくとも、それなりに意味の通る文章として表現しようと心がけてみてください。
そのためには、どうしても、観察した自分の気持ちが整理できていないと、文章にはなりにくいわけです。
逆の言い方をすれば、言葉に表そうとすることによって、結果的に、自分の気持ちが整理されていく、ということです。これがエクスプレッシブ・ライティングの2つ目の効果です。
<エクスプレッシブ・ライティングの2つの効果>
- 自分の気持ちを観察することで、よく知ることができる
- 言葉に表そうとすることにより、自分の気持ちが整理される
専門的には、1つ目の効果を「セルフ・モニタリング」、2つ目の効果を「認知的再体制化」と言うことができます。
この2つは「認知行動療法」という心理療法のアプローチの基本的な枠組みでもあります。
つまり、エクスプレッシブ・ライティングは、とてもシンプルな方法ですが、そのシンプルさの中に認知行動療法の基本構造をそのまま内包しているのです。
エクスプレッシブ・ライティングのやり方・書き方
エクスプレッシブ・ライティングのコツは、「書けそうなときに書く」ということです。
まだ自分の気持ちと向き合う準備ができていないのに無理矢理直面する必要はありません。
出来事からある程度時間が経ったところで、「書いてみようかな」と思ったら書いてみると良いでしょう。
これは、エクスプレッシブ・ライティングを継続するためのコツでもあります。つまり、厳密にルール化したり、「書かなくては!」と無理に頑張ったりして、自分を縛りすぎないことです。
また、分量や誤字脱字などは一切気にすることはありません。
ただ書いてみたいと思ったときに、書きたいことを書きたいだけ、自分の言葉で書く、そのくらいの緩い気持ちで続けてみると良いでしょう。
<エクスプレッシブ・ライティングの書き方>
- 気持ちに向き合う準備ができた時に書く
- 出来事から時間が経ってから書いてもOK
- 無理に書こうとしたり、ルール化したりしない
- 分量・誤字脱字は気にせず書きたいことを書く
自分の気持ちを表現する言葉を磨いておく
このようにエクスプレッシブ・ライティングは「自分の言葉」で自分の気持ちを書く、という技法です。
そもそも言葉(言語)は、他の動物にはない人間特有のツールであり、ということはつまり、人間にとってとても重要かつ強力なツールなのです。
これを上手に使うことによって、自助的な取り組みとして自分の気持ちを整えていくことができます。
別な見方をすれば、普段から、本を読んだり映画を観たりすることで、あなたの「言葉」の力を養っておくことをお勧めします。
豊かな言葉を持てば持つほど、気持ちが整い、心も豊かになっていきます。何も良い言葉だけを身につける、ということではありません。自分の気持ちを表現する言葉のレパートリーをたくさん持っているほど、気持ちを整え、心を豊かにするツールとして威力を発揮します。
そうして日々、言葉を磨くことが自分自身を磨くことにつながっていきます。
このコラムの執筆者
白鷗大学 湯川進太郎 先生